怪しい空気活性機を分解する

コロナ禍の中、激しいワクチン競争が起こっている。
自分は無事予約を取れたが、未だ予約も取れぬままの友人も多い。

そんな中、あえてワクチンを打たない選択をする人も存在する。
理由は個々人によって様々で、私の古くからの友人A氏の母親もその一人だ。

主義主張は人それぞれで、たとえ全く理解できない話だとしても他人という立場上、それを否定することは難しい。
だが、友人A氏母親の話を聞くに、その主義の情報ソースに心当たりのある単語がよく出てくる。

「オンラインサロン」

という単語だ。

A氏も私も、同じ悪寒を抱いていた。
A氏が情勢下で帰省もままならない中、独り身の母親が怪しいコミュニティに籠絡されているのでは?という疑念だ。

そこで、ふとある物を思い出す。

それは一昨年にA氏の母親から送られてきた「空気活性機」なるものだ。

それはA氏の為にと送られてきた機械で、「空気活性機」なるものだった。
トイレや枕元に置いてくれとのことだったので、恐らくコンパクトな空気清浄機か何かだと思っていた。

まあ実際かなり怪しいなとは思っており、他人の親なのでと放置していたのだが、「もしや?」と思いこの機にこの商品について色々調べてみることにした。

商品説明

具体的な商品名については避けるが、とりあえず公式サイトの商品説明を順番に上げていく

商品説明は、『電圧(電気振動)で空気を活性化します。

空気清浄機としては聞いたことのない仕組みだ。
電気工学には明るくないが、電気振動ということは電磁波だろうか?
にしてもそれが空気に影響を及ぼすなど聞いたことがない。

また、安物の清浄機にありがちな、実際はオゾン発生器だったりするアレだろうか?
『空気を活性化します』という説明もどうにもふんわりしている。

他にも、

  • 電池を使用するタイプなので、コンセントは必要ありません。
  • 振動音等、音がしないので静かです。
  • 電池消耗がほとんどありません。(電池を何も使わないでおいておく自然消耗程度)

等、一見それっぽいことが書いてある。

実際駆動音も全く無く「動いてるのか?」と思うほど。それに電池消耗もほとんどないという。

また、例によって商品の説明よりも「お客様の声」の方が多い

「においがなくなった」「よく眠れるようになった」「虫が消えた」「犬が吠えなくなった」等など。
更に販売店のブログもあったのだが、「瀕死の猫がよみがえった」とも書いてあった。

流石におかしい。


極めつけは値段である。

税抜20,350円

この数字を見たとき、A氏と一緒にひっくり返ってしまった。

流石に動いているかも怪しい機械に2万は只事ではない。
息子のためを思っての行動ならば、尚更である。

よって、この機械を分解し、商品説明が正しいかどうかを確かめることにした。

原理はわからなくとも動作しているのかを確認できればこちらとしても安心できるし、インチキ商品ならばそれをA氏の母に示すことも可能であると考えた。

分解する

まずは外観の確認である。

スチール製のずっしりとした作りだ。
恐らく計測機器用のモジュールケースを使っているのだろう。全く同じものは見つけられなかったが、類似品はだいたい1000円ほどだった。

裏には製造元や商品名の他に、電池交換のタイミングも書いてある。

商品説明には自然放電と同じぐらいの電池消費量との記述があったが、こちらは電池1年交換目安。

御開帳。

上蓋はネジ止めされておらず、簡単に外れる。

単三二本のバッテリーケースと、フィルター?らしき本体が。

基盤は確認できなかった。

レーザーカッターで切断された木材で組み上げられており、工作精度は意外と高い。
自然派の人たちにはこういう木材質の構造が寧ろ信頼性を上げているのだろう。

ネジを外し、蓋を開ける。

もうこの時点で「ん?」となった。もう説明抜きで分解していく。

フィルターを抜き

外す。

この時点で自分とA氏は大分参ってしまっていた。

見ての通り、基盤など存在しない。

また、電池ボックスから繋がれた銅線は、金属パイプにはんだ付けされ、そのまま空に途切れていた

つまり、この機械は最初から動作しておらず、そもそも電気が流れない構造だったのだ。

因みに金属パイプはホムセンの水用パイプに固定もされておらず、弾力を使って無理やりはめ込んであるだけ。

フィルター部はセラミックボールと貝殻とサンゴだった。メッシュ部は恐らく園芸用のものだろう。

分解が終わった後、あまりの虚しさに二人で半笑いするしかできなかった。
自然放電ぐらいの消費量って…そういうね…

おわりに

紛れもなく、これは不当表示に当たる。

2万でゴミを買わされたA氏の母には心底同情するが、A氏と相談し、ゆっくり解決していこうという話になった。

というのも、数年地元を離れた息子の声より、地元や職場にいる詐欺師の方がその母にとっては信頼できる言葉だからである。

まずは前買ったこの商品が詐欺商品であったことだけに絞って説明する。商品を勧めた人やグループに対しての不信感を与え、「あれ?この人の言ってること正しいのかな?」と疑うこと、多角的に考えることを勧め、徐々に自立を促す方向に行こうと決めた。

勿論片親ということもあり今すぐ帰って様々な面で支えることが望ましいが、時勢柄難しい。
叔父に連絡し、様々な面でサポートしていく準備を整えた。

分解は飽くまできっかけであり、終わりではない。これを機に徐々によりよい家庭に戻ることを切に願う。

余談

勿論、当該商品は不当表示で消費者庁に報告した。

追記(2021/08/17更新)

引用について。

当記事がインターネット上で大きく拡散されており、自分でも驚いている。
反応は茶化すものが殆どであったが、中には「親が同じようなものを買っており自分も不安」「配偶者に勧められた」等、同じような不安を抱えた人の声も少なくなく、正直救われた気持ちでもある。

ただ、広まりすぎたせいでまとめブログなどにも転載されるのも散見されるようになった。
そもそも当記事のメインは、分解し商品が機能しているかどうかを探り、それを通じて親子の関係をより良いものにする為の解決策を探ることが主目的だ。

コンテキストを汲まずに煽り立てる目的の転載、または目的上正当な範囲を満たさない引用はご遠慮頂きたいです

また、当記事の商品説明文も正式な引用のフォーマットに則って記述するため、引用元を明記する。
これについても引用目的のため、引用元への干渉や連絡等は避けて頂きたい。
(消費者庁への報告等、建設的なことをしよう)

引用元

TenemosNET STORE ピッコロM (携帯用空気活性機)
テネモスのお店ブログ 4年使っても消耗ゼロ。空気活性機「ピッコロ」

5 thoughts on “怪しい空気活性機を分解する

  1. もしこの後も展開があるようでしたら、この場で読ませて頂ければと思います。
    不安を煽ってこういった事で稼ぐ輩には、本当に嫌気が差します

  2. 初めまして。
    この会社とそれなりに付き合いがある者です。

    ここの従業員の方は目が変に元気があり若干異質な感じを醸し出しております。
    商品に関しても熱心に取り組んでいる感はあるんですが、僕も怪しいなとは感じていました。

  3. そのフィルターのようなネットは
    植木鉢やプランターの底に敷くためのやつで、
    ホームセンターの園芸コーナーに行くと
    鉢底網や鉢底ネットという商品名で売られていますね。

  4. わたしも自然派と呼ばれる類の人間で、森修焼きやEMXゴールド、電磁波を防ぐと言う目的で2万もする延長コードを購入したりしていました。
    息子から、否定ではなくやんわりと「母さんそれは似非科学と言うのだよ。」と言われ(笑)少しずつ自分の考え方に疑問を抱き、改善を重ねています。
    ブログ主さん、Aさんのお母様を思う気持ちにじーんと来ました。
    お母様も、Aさんの健康を考えての事でしょうが、先ずは人を騙す商品がこのように明るみに出ると消費者の意識改革になると思います。
    ありがとうございました。

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